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『黒部の家といえば?』を見に行ってきた

2026/09/25 つぶやき

愛本地区。愛本橋から舟見に抜ける街道から1本入った道沿いに、今回の物件はあった。

オーナーさんによれば、ここはオーナーさんのおばさんの家だという。
『黒部の家といえば?』という問いに対する答えが詰まった、この地区の民家をまとめたような物件がそこにはあった。

玄関を開けた瞬間に現れる応接室

玄関の引き戸を開け、入口を入ってすぐ横の部屋へ向かう。
この位置にある部屋はもっぱら
『応接室』
というのがここ近年空き家バンクと担当してきた筆者の中での“あるある“である。

例に漏れず、この物件も扉を開けると期待通りの『応接室』が現れた。
昔ながらの和風古民家としては、どこか良い意味で異質な空間である。
・しっかりと整えられた洋間
・天井から吊り下げられたレトロなシャンデリア
・クッション付きの重厚な椅子。
何もかもが完璧なまでに『The 応接室』としての品格を漂わせている。

いまでは見かけない?謎の床柱

応接室の反対側に目をやると、ここにもまたこの地区の民家あるあるが隠されていた。
それが床の間を象徴する『床柱』である。

「床柱」とひとことに言っても、世の中にはさまざまな種類が存在する。
例えば、
単に木の皮を剥いだような無骨な円柱の床柱
逆に綺麗に角を落としてカットされたスクエアな角柱の床柱
使われる木材の種類も地域や時代によって千差万別だ。

しかし、なぜだろうか。
この黒部の民家を巡っていると、どういうわけかこの物件にあるような
柱の3方を角材のように切り落とし、1面だけ木材本来の凹凸を残した床柱
がほとんどである。
そして、この物件も例にもれず、その様式の床柱を採用している。

筆者自身、木材の専門知識があるわけではないので、
「これが何という品種の木材なのか」
という正確な名前までは特定できない。
しかし、この計上は黒部の民家を象徴するディテールだと感じる。

富山民家の象徴、「井波彫刻」の欄間

続いて居間へと足を踏み入れる。
すると、またしても“あるある”を感じさせる要素が目に入ってきた。
それが素晴らしい細工が施された『欄間(らんま)』である。

これはこの地区特有というよりは、富山県内の古い家全般に言えることかもしれない。
そう、富山民にとっては富山民家の象徴である、あの名高い『井波彫刻』である。

立体的に彫り込まれた松や鷹などの意匠は圧巻の一言。
光と風を通しながらも、部屋全体の格調をぐっと引き上げてくれる。
職人の技が息づくこの細工が当たり前のように鎮座しているあたり、
富山の家の懐の深さを実感せざるを得ない。

なぜ2つある?トイレに隠されたミステリー

1階の探索を続け、トイレへ向かう。
ここにもしっかり『あるある』が潜んでいた。
これは地元民や古民家好きならピンとくる簡単な問題だろう。

そう、小便用と大便用のトイレがしっかりと2つ設置されていることだ。

なぜか黒部の家には、この2種類の便器が並んで存在する。
しかもたまにではなく、ほぼ毎回と言っていい確率である。

お盆や正月に親戚一同が大量に帰省することを見越して余裕を持って作ったのか、
家自体のサイズが大きいことに由来するのか、
真意は定かではないが、
とにかく昔の黒部の家づくりにおいて
「トイレを2種類設置する」
というのは外せない要素だったようだ。

伝統の機能美「トントン葺き」の屋根裏

ここからは階段をトントンと上がり、2階の様子を見てみよう。

階段を上がって早々、真っ先に目についたのは剥き出しになった屋根の構造である。
この見せる屋根の作り、これまた宇奈月の古民家では毎回遭遇する。

あまりにも毎回見かけるため、逆に興味が湧いて詳しく調べてみた。
すると、この屋根の伝統的な工法を『トントン葺き』と呼ぶらしい。

昔の大工さんが薄く割った木皮を屋根に打ち付ける際、
テンポよく釘を打つ音が「トントン」と一定間隔で響いていたことから
『トントン葺き』と名付けられたのだとか(笑)。
なんとも味わい深いネーミングである。

しかし、ネーミングの可愛らしさとは裏腹に、
この構造は北陸の厳しい気候にしっかりと適応した素晴らしい機能を持っているらしい。

最大のメリットは「湿気をしっかり吸う」ということ。
年間を通して湿度が高い北陸の地において、
調湿効果のある木皮の屋根は家を長持ちさせるための必需品だったのだろう。

また、瓦の下にこの木皮を何層も重ねて敷き詰めることで、
冬場に瓦の隙間から侵入してくる雪解け水が室内に漏れ出るのを防ぐ役割も果たしている。
見た目の力強さだけでなく、先人の知恵が詰まった理にかなった構造なのだ。

雲雀野台地を一望する最高のロケーション

この物件の最後を締めくくるのは、2階の窓から広がるこの圧倒的な景色だ。

2階の窓辺に立つと、愛本地区が広がる“雲雀野(ひばりの)台地”を一望することができる。
ここからの眺望は、富山県が見せる四季折々の移ろいを特等席で
贅沢に眺めることができる最高のスポットだ。

今回取材で撮影に訪れた日は9月の上旬。
ちょうど稲刈りを直前に控えた時期であった。
黄金色の中に名残の青さが残る実った稲穂が一面を埋め尽くしており、風が吹くたびに美しい波を描いていた。

ここから秋が深まり、冬を迎えるにつれて、
この黄金色の景色は静寂に包まれた一面真っ白の幻想的な雪景色へと変化していくのだろう。
春には鮮やかな新緑が芽吹き、夏には青々とした稲が育つ。
季節の訪れを五感でダイレクトに感じられる場所だ。

そんな美しい景色を毎日眺めながらの、のんびりとした宇奈月暮らし。

あなたもここで始めてみるのは、いかがだろうか?

 

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