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クロベスト人物編 黒部市UIJターン 黒部で暮らす若きトップランナー [○○×わたし]

File No.02 伝統のazi わたし

既成概念を超えていく

蒲鉾製造業経営
中陣新平さん

中陣新平さん

石川県出身。学生時代を北海道で過ごし、県内企業に就職、広告関係の営業マンを経て、2008年、縁あって生地(いくじ)で蒲鉾づくりに携わることに。「蒲鉾のことも、生地のこともよく知らなかった」という中陳さんは、およそ100年続く老舗家業の味と技を一から学ぶことになります。2013年、代表取締役に就任。地域で長く愛される確かな味はそのままに、アイデアが光る新たな商品開発に取り組んでいます。

「うちの味」を守る

「老舗を継ぐといっても、はじめはそんな気負いのようなものはなかった(笑)。」少し照れながら、当時を振り返る中陳さん。県内外の蒲鉾メーカーで2年間修業してからの入社でした。「朝5時から立ちっぱなし、身体がきつかったですね。環境も変わったし、精神的に辛い時もありました。食事もあまり食べられなかったかな。」と語ります。
細工蒲鉾の技術は、入社後、妻の父である会長から教わり、閉店後に特訓。会社員からの転身は、日々、一から学ぶことの連続だったそうです。

蒲鉾を作る中陣新平さん

富山の名産品として知られる蒲鉾ですが、中陳さんによるとメーカーごとに製造法や原材料に違いがあるとか。「うちでは蒲鉾を寝かせて弾力を出す『坐り(すわり)』工程で、通常より長く一晩たっぷり寝かせるんです。これは、昭和40年代から続く自社独自のもの。厳選された原材料を活かしたうま味と食感、しなやかな造形が『うちの特徴』です。」と胸を張ります。
令和2(2020)年3月、第72回全国蒲鉾品評会で農林水産大臣賞を受賞。「自社として、これまでで最高の賞でした。原点とも言える昆布巻きの蒲鉾が評価されたことは、本当に嬉しい。」と言います。「会長から教わったのは、原材料に妥協しないこと。製造法も昔からほとんど変えず、守り続けています。昆布もすり身も価格高騰でとても厳しいなか、うちの味を守りながら会社を継続しなくては。」と経営者の顔を見せました。

美味しさ×アイデア

従来のラインナップに加え、富山や黒部の名物・特産とのコラボ企画などにも積極的に取り組み、商品開発に余念がない中陳さん。なかでも近年、注目されているのは、すり身のやわらかさを活かしてネコの肉球をモチーフにした商品です。「もっと可愛くしようと思えばできるんだけど、味や食感が変わるのは嫌だから。」と、美味しさとフォルム(形状)の両立にこだわり、質の高いギフト商品に仕上げています。

蒲鉾
ととしーと

また、キャラクター弁当用に開発したカラフルなシート状の蒲鉾は、ターゲット層に身近なSNSを通して発信。これまでにない斬新なアイデアがインパクトとなり、全国から注文が入り、生産が追い付かないこともあるそうです。「シート状蒲鉾は蒲鉾の皮(外側部分)を商品化したものです。効率性を考えて在庫を持たずに受注生産でやっています。でも、SNSでファンの多いユーザーが投稿したり、メディアに取り上げられたりすると、あっという間にものすごい数の注文が入るんです。」と、インターネット販売ならではの難しさも感じています。
時流をとらえたヒット商品を生み出すコツを『アイデア勝負』と即答します。「まず、食べて美味しいことです。そのうえでセンスが光るアイデアが大事だと思っています。」と答えました。

蒲鉾の概念を超える

現在、中陳さんの会社では2021年春に開業する道の駅「KOKOくろべ」への出店に向けて、すり身の美味しさを活かした新商品を提供しようと試作を繰り返しています。そこには、中陳さんが大阪の修行先で見かけた、行列ができる揚げ蒲鉾専門店の思い出がありました。
「富山で蒲鉾というと、冷蔵された『ふかし蒲鉾』という既成概念があります。それを超えるような美味しいものを作って、もっとお客さんに喜んでもらいたい。行列ができるようなお店になれば、黒部市の活気にもつながります」と熱く語ります。その一方で「自分たちにも、まだまだ美味しさを伝える努力が足りない。」と現状の課題を見つめる冷静さを忘れることはありません。

子どもたちにつなぐ故郷の記憶

中陳さんによると、食生活の多様化で蒲鉾が食卓にのぼる回数が減り、近年は生産量・消費量ともに減少傾向にあるとか。中陳さんの会社では『子どもたちが蒲鉾の味を忘れないように』と、市内の小学生のために蒲鉾の絵付け体験を積極的に受け入れています。「子どもの頃の食の体験や記憶は、大人になっても覚えているそうです。絵付け体験や蒲鉾の味を伝える機会としたいと考えています。」長く親しまれてきた地域の味、蒲鉾。伝統を受け継ぎ、かつ新しい美味しさを追求しながら次代につなげる努力を惜しまない姿が、ここにあります。

蒲鉾の詰め合わせ

COLUMN

職住近接、リフレッシュ施設も充実した黒部の環境

自宅と会社は自転車で5分の距離です。楽しいことも辛いことも、仕事のことは家庭に持ち込まない主義。ただ、試作品は子どもたちに食べてもらいます。一番素直な感想が聞けますから。出社するのは朝5時から7時ぐらい、11月~12月の繁忙期を除いて土曜日曜はお休みです。
お気に入りの場所は、黒部市総合公園とYKKセンターパーク。自動車ですぐの距離に運動できる自然が豊かな公園があるのはいいですね。気分転換に走りに行って、気持ちいい汗をかいています。近くにいろいろな温浴施設があって、サウナで汗を流すのも長年続けているリフレッシュ法です。スポーツはすることも、見ることも好きで、一番多い休日の過ごし方だと思います。YKKセンターパークは静かでおしゃれなカフェがあって、子どもと一緒に出かけられる公園としてもおすすめ。黒部市民にとって自慢のスポットです。

黒部市総合公園
黒部市総合公園
黒部市総合公園
YKKセンターパーク
YKKセンターパーク
YKKセンターパーク
第72回全国蒲鉾品評会「昆布巻蒲鉾」農林水産大臣賞受賞
第72回全国蒲鉾品評会「昆布巻蒲鉾」農林水産大臣賞受賞